昨日のテレビ東京の「ガイアの夜明け」で、キリン堂の双11(シングルデー)が特集されていましたね。
http://www.tv-tokyo.co.jp/gaia/backnumber3/preview_20141216.html
番組上は、売上の途中経過の報告として、日本円で1億5700万円というところまで出ていました。
このキリン堂の「凄さ」は、決して売上金額ではなく、Revuerのシャンプー5万本、コンディショナー2.5万本を杭州(?)の保税区(跨境EC特区:跨境贸易电子商务服务试点)に在庫し、売り切ったことでしょう。
(違う色の商品だったような気もしますが。。。)
業界12位とはいえ、1000億円プレイヤーであるキリン堂の規模があれば、メーカーの協力を取り付けて、これだけの本数を手配して中国に飛ばすのは、一見、簡単なような気もします。
ただ、実際のところ、こういうことを手掛ける場合、片道切符で、全部中国で売り切る覚悟がないと手が出せません。(理論上は保税区から日本に商品を戻せますが、EC特区から商品を外に出す手続きが煩雑。EC特区から海外に出す手続きさえできてしまえば、コンテナの場合、運賃は大したことないですが、とにかくルールがまだ固まっていないので、最初は手続きの手間が大変で、本当に戻せるか保証もありません。)
そして、それよりも怖いのが関税なのです。
番組の中でも、途中で「課税されるかも知れない」という話が出てきて担当者の方が困惑する場面がありました。
中国向けに日用雑貨等の貿易に関わっている方であれば常識ですが、もともと商業輸入する場合、せっけんやシャンプーなど、肌に使うものは、中国では「化粧品」に分類されます。
化粧品に分類されるということは、商業輸入の場合は、CFDA(国家食品薬品監督管理総局)の許可証が必要になるということです。もちろん、関税も化粧品の関税が適用されるのですが、商業輸入においては、CFDAのハードルが高いため、そちらがすぐに話題になります。小さな会社が石鹸の輸入をやる場合は、「洗濯石鹸」ということにして無理くり持ち込むケースなども見られますね。
さて、個人輸入の場合は、CFDAの許可がないものでも個人の責任で輸入できるわけです。これを、EC特区に在庫して売るというのは、CFDAの規制に対するループホールなのです。
これを日本で例えると、ネット通販が禁止されている特定の医薬品や、日本では許可されていない未承認医薬品を、日本の保税倉庫に在庫して、日本国内のネット通販会社が日本国内向けに通販するようなものなのです。まあ、有りえないですよね。
で、中国では、国家が自らこういうループホールを作ったわけですが、その代わりに、課税はしっかり強化されていて、実際にお客様に販売した金額を正しく申告し、正しく納税する必要があります。
そして、これまで何度か書いてきたとおり、化粧品の簡易課税率は50%なので、お客様には100元未満で販売しないと課税されてしまうわけです。しかも、お客様が他の商品とあわせ買いした場合、合計で課税金額が50元を超えると課税されるわけですから、例えば送料込み99元で販売するのであれば、他の商品との同梱はできなくなるわけです。(まあ、もちろん納税すればOKですが)
番組上では、「課税されるかも」→「課税はない」という流れだけが放映されていたので、詳細は分かりませんが、もちろん、中国の運用会社や物流会社は、これに対してもいろいろなループホールを探し、税関当局と交渉します。
映像では、 商品を受け取った人の映像で、確か大量の商品の中にRevuerが混ざっていたような気がしますが、あれはEMSで日本から届いていたようにも見受けられましたので、今回のRevuerについては、商品単価やEC特区の基準から考えると、
- Revuerだけの注文の場合は、1本ずつ1箱にして小口をわけて対応
- 他商品とのあわせ買いの場合は、日本からEMS
というような対応をとったのではないかと想像されます。(あくまで想像です。もっと凄いことが起きていた可能性も、もちろんアリですが。)
Revuerは、日本での過去のマーケティング展開、商品単価と課税基準等を考慮したときに、双11に向いている商品です。それでも、
- 絶対に売れるオムツとかさらに有名な商品で他社と価格の叩き合いをやるのではなく、Revuerクラスの商品を選択し、メーカーの協力を取り付けたこと
- 商品単価、重量等で、EC特区に向いた商品を的確に選択したこと
- このために7.5万本の商品を保税区に送りこんだこと
というこの判断力と勇気は、本当にすばらしいと思います。
全くの余談ですが、弊社の事例だと、某シャンプー/コンディショナーのシリーズにおいて、上海ルートで某社にお願いした際に、「何とかならないかなぁ」と相談したところ、なぜか
こういう商品の、赤、白、金のシャンプー、コンディショナーは雑貨扱い、ただし、
は、化粧品扱い、という、価格等よりもルックス重視の扱いになったことがあります。
(弊社では、最近、このルートでこういう商品を出していないので、上海が今もこれらの商品を雑貨扱いしてくれるかどうかは、定かではありません。。。)
EMSの場合は、理論上の課税基準はEC特区と変わらないですが、実際には、
- 1000元未満であれば課税されない
- 同じ商品が7個以上入っていたら課税される
など、いろんな都市伝説(?)が中国のお客様から弊社に連絡されてきます。
実際のところ、弊社の感覚では、高額商品を送って、課税される確率は10%ぐらいなので、まあ、時期によって対応は異なるけど、ランダムチェック、ただし、ぱっと見て大したことないものは課税しない、という感じでしょう。
ちなみに、弊社の場合、EMSでの課税についてはお客様の責任でお客様負担をお願いしていますが、Tmall国際とかは、裏でEMSで課税されても店舗側が面倒を見ることが求められたりしているようですね。
さて、今後、中国国内で抜群の知名度を誇る某社や、日本のEC大手など、同業種の強者がTmall国際に出店するという噂があります。
2013年7月のTmall国際プレオープンから出店しているケンコーコムや、それを追って出店したキリン堂にとって、これから、本当の正念場がやってきそうです。
日用品・化粧品における日本商品市場では、中国消費者の需要にまだまだ供給が追い付いていない側面もありますので、これからの展開が面白そうです。2000年ごろ、ECに対して冷ややかな視線を送っていたメーカーも、今はECが重要なチャネルになっているように、今は中国向け越境販売や並行輸入に冷ややかな視線を送り、阻止に走っているメーカーも、これから数年のうちに、このチャネルを重視するような展開になるのではないでしょうか。