先週の双十一の喧騒も、ようやく一段落する時期になってきました。
と言っても、まだまだ出荷に追われている企業がたくさんあるでしょうし、末端の物流はまだしばらく落ち着かない状況と思われますが。。。
さて、今年の双十一の流通総額は57,114,214,058元とのことで、ギネス世界記録に認定されたようですね。
まあ、出荷も終わっていないし、今後、配達不能や不良品などのキャンセルもかなり出るでしょうから、これをもって1日の流通総額とするのはちょっと早すぎかもしれませんが。
それにしても、円安ということもありますが、日本円に直すと1兆円を超える金額。さすがに中国EC市場の4分の3を支配するアリババだけあり、金額からして桁違いです。
思えば、楽天が、1年間の流通総額で1兆円を超えたのがまだ3年前。それを、アリババは天猫とタオバオで1日で流通させてしまうわけですからね。。。
【好調な日本商品】
さて、その中で、ユニクロが総合ランキング5位に入るなど、日本の商品の販売も目立ちました。
ユニクロは、おそらく、2億~3億元ぐらい売ったと思われます。
また、花王メリーズは、ベビー用品のカテゴリの1位。これは、おそらく花王の直営店ではなく、数えきれないほど多くの会社が日本から並行輸入しているからでしょう。
それにしても花王メリーズ、みなさんどうやって調達しているですかね。。。
通常は日本よりかなり高く売れるとは言え、双十一は価格競争が熾烈。
まあ、私も中国の保税倉庫で、外に「おむつ」とだけ書かれた段ボールや無地の段ボールを見つけて、ちょっと頼んで中身を見せてもらったら、全部メリーズだった、なんてこともありますので、多くの人がドラッグストアで買い漁って転売している、というレベルではなく、流通過程のあちらこちらで組織的に横流しされていることは間違いないでしょうが。。。
それはともかく、天猫国際に出店する日本企業も概ね好調だったようですし、中国国内の天猫に出している各社もかなり積極的に双十一のセールを展開、そして、中国系の方が天猫国際や天猫運営する日系商品の販売サイトは、日本企業直営のショップよりも売り上げがはるかに大きいことを考えると、低価格な美容商品やベビーなど、ドラッグストア系の商品だけで、少なく見積もっても数十億円は売れたと思われます。そして、ユニクロだけでも数十億円、ということは、日系の商品だけで数百億円は売れたはずで、もしかしたらさらに1ケタ上かも知れません。
【非効率の低減】
さて、製造や流通の現場からすると、販売量は安定して漸増するのが一番良いわけで、1日でこれまで数カ月分と同じ量が売れてしまうというのは現場的には悪夢ですし、非効率極まりないわけです。
ただ、これまでは物流現場の混乱とかが大きなニュースになっていましたが、今年は例年に比べて静かな感じがします。
おそらく、物流側が例年の行事として慣れてきただけでなく、キャンペーンサイトや予約販売など、天猫側のほうがしっかり用意し、販売店側も計画的にセールできる環境が整ったことが大きな要因でしょう。
また、アリババ側が、出荷の状況を報告させたり、商品だけでなく物流面も全面的に管理するようになったということも大きいでしょう。
ウェブサイトも、セールのスタート直後に阿里旺旺(チャットツール)が不安定になったりアクセス解析ができなくなったりはしましたが、最初の30分強で100億元の売り上げという、強烈な状況になってもサイトが落ちることもなく、買い物もできたというあたり、システム側の負荷分散などもかなりしっかりされていたようで、こういったところからも、アリババの底力の凄さを思い知らされます。
(片や日本の大手サイトでは、偽ブランド品が堂々と販売されていて、商品コメントに偽物だという指摘が入っていても放置されているし、返金交渉も当事者同士でさせている状態のようですからね。。。Amazonはちゃんと間に入るらしいですが。)
中国は、支付宝のケースを挙げるまでもなく、もうアリババの作ったルールが中国ECの法律になっていく世界で、そして、そのルールは大多数のユーザーに支持され、信頼されているわけですね。。。
【個人店舗には厳しい展開】
ただ、こうやってお祭りとして洗練されてくると、小規模のお店にとっては面白くない展開になってきます。
以前であれば、とりあえず天猫・タオバオに大量のアクセスが発生し、個人店舗のPVも増えて、それなりに売り上げが増えたのですが、今年の場合、0時とともに、まずは限定商品の争奪戦、夜が明けても、大手サイトが展開するお買い得品を探すだけで、1日が終わるようになってしまいました。
それなりに大規模に展開し、キャンペーンサイトに商品を出したり広告できたりする会社にとっては、もうあとは調達力勝負です。私が普段から接している分野でも、商品はあればあるだけ売れる状態ですから、あとはいかに調達するか、そしてどこまで在庫リスクを負うことができるかという、まさに体力勝負となっていました。
逆に、タオバオの弱小ショップの場合、、、体力がなければ、もう戦わないというのが一番無難な選択でしょう。昔のように、放っていてもお客さんが来てくれるわけでなく、それどころか、普段よりアクセス数が落ちるわけですから。。。
【ブランド浸透の好機を潰す日本企業】
ところで、中国の消費者は、日本メーカーが中国向けに製造したものより、日本向けに製造したものが直接送られてくるほうを好む傾向があります。まあ、グーンの本物そっくりの日本語パッケージの偽物なんかも出回るぐらいですし、消費者が日本商品に求めるものは安心・安全ですから、直送を好むのは理解できます。また、「中国用商品」ということは、日本向けと商品が異なると言っているわけですが、一般的に「中国向け」=「廉価版」のイメージがある場合などもあり、中国の消費者にはあまり歓迎されていないようです。もちろん、化粧品などは、認可されている成分の関係で、日本版と中国版でフォーミュラを変えざるを得ない場合もあるわけですが。
まあ、現在、日本人が普段から使っているのとまったく同じ商品を使いたいと思っている、ある意味「本物指向」の中国の消費者が増えているのは間違いないでしょう。
さて、そんなわけで、いくら中国で中国市場向けの商品を販売していても、そちらの売り下はパッとせず、日本からの並行輸入品だけがガンガン売れる、なんていう商品が多々見受けられます。そういったときの日本の大手メーカーの反応には、
- 積極
- 黙認
- 阻止
の3つのケースがあります。
実は、中国未進出の中小メーカーであれば、「積極的」に「越境販売」されるケースもありますが、すでに現地法人が中国製の商品を中国国内に展開している場合は、カニバリ(というより現地法人・提携先の面子が本音?)への配慮、まだ未進出の場合でも、製造物責任等の問題からか、もしくは手間の問題か、なかなか積極的になれないという事情があります。
そして、稀に、「阻止」に動く企業があります。まあ、製造がまったく追いつかないが、かといって先の見えない中国市場のために国内工場を増やせないとか、中国の現地代理店等との契約で、日本から並行輸入されるわけにはいかないという事情を持っている場合もあるでしょう。
しかし、「阻止」するのは、もったいないなぁと思うのです。
正面から中国市場に入ろうとしても、広告費やら流通ルートの確立はかなり大変な費用と労力が必要です。それが、並行輸入目的の日本国内での買い付けを「黙認」しておくことで、流通業者や消費者が勝手に宣伝し、口コミを作り、市場での知名度を形成するのです。
せっかく誰かが勝手にタダで宣伝してくれるのだから、とりあえず乗っかっておいて、ブランド名とかがある程度浸透してきた時期に、自社で改めて本格進出すればいいのに。。。って思うのは、私だけでしょうか。
中間層の所得が全体的に底上げされ、本物を求める消費者が増えて来ている今の中国市場は、日本のメーカーにとって面白い時期だと思うんですけどね。。。
もちろん、横流しを徹底的に「阻止」しようとしているメーカーのほうでは、別にちゃんと中国市場攻略の戦略があって「阻止」されているのだとは思いますが。